第63章 上司のために佐助大活躍!
500年後で過ごした二人は、椅子やソファに座ることの良さを知っている。
語学の勉強の時も、図書館で読書に勤しんでいる時も、足が窮屈ではないというのがどれほど集中できるか実感した。
だから余計に正座を強いることはしたくなかった。
龍輝が結鈴と交代して椅子に座っている。
大喜びの二人を見ていると、信玄と謙信の目が穏やかなものになった。
今一度感謝の言葉をと、謙信が口を開きかけると結鈴の声が響いた。
結鈴「ねえねえ、龍輝の机と椅子の材料、なんだか大きいね?」
言われてみると、明らかに干してある木材が大きい。更に多い。
信玄がさらりと答えた。
信玄「姫にも作ってやろうと思ってな。
食事用じゃなく、仕事用だ」
謙信「…仕事用?」
若干低くなった声に信玄が敏感に気が付いた。
信玄「姫は恐らく針子の仕事をして生計をたてるつもりだろう?
市で布の切れ端を買ってきているのを見ているしな。
長時間座っての縫い物は疲れるだろうと、仕事用の机をサプライズで作ってやろうと思ってな」
龍輝「さぷらいずって何?」
結鈴「結婚式の時と一緒でしょ?ママに秘密にしておいて驚かせるやつ!」
結鈴が好奇心で目を輝かせ、龍輝がわかったというふうに頷いた。
龍輝「僕、何か手伝う~」
結鈴「私も~!」
謙信「………待て、信玄。それは俺が作る」
信玄「は?」
龍輝・結鈴「え?」
謙信の発言に三人が目を丸くした。
三人とも謙信が大工仕事をしている姿を見たことがなかったからだ。
信玄が噴き出した。
信玄「やめておけ。慣れないことをすると怪我をするぞ。
姫は謙信が怪我をしたら悲しむだろう?」
謙信「それはそうだが、仕事用ともなれば一日の大半を机に向かうことになるだろう?
その机を信玄が作ったとなれば、俺の気が済まん。
怪我もとより承知だ。俺が作る」
頑として意見を曲げない謙信に信玄は肩を竦めた。
信玄「仕方ないな。俺が助手になってやるから、結鈴と龍輝は舞がこの辺に近づかないようにしてくれるかい?」
結鈴・龍輝「「うん!」」