第63章 上司のために佐助大活躍!
(第三者目線)
謙信が冬支度の作業を中断して休んでいると、賑やかな3人が呼びに来た。
信玄「謙信、ちょっといいか?」
結鈴「パパ―、みーてー!」
龍輝「はやく~」
謙信「?…わかった」
案内されるままに外に出ると、小さな机と椅子がひとつ置かれていた。
結鈴「ご飯を食べる時の机を信玄様が作ってくれたの。どう?」
結鈴が満面の笑みで椅子に座ってみせた。
龍輝が『いーなー』と言いながらその周りをクルクル走り回る。
信玄「龍輝のは明日、時間ができたら作ってやるからな。
どうだ謙信、机や椅子の高さを見てやって欲しいんだ」
正座で食事を摂る習慣がなく、足が痛いという二人のために信玄が片手間に作ってくれたようだ。
謙信は屈んで結鈴の様子を見て、小さく頷いた。
謙信「良いのではないか?良かったな、結鈴」
結鈴「えへへー」
龍輝「いーなー」
信玄「龍輝の机に使う木はあそこに干しているからな。
伐りだしたばかりの生木を使っているから、使っているうちにひび割れやゆがみがおきるかもしれないが、当面は大丈夫だろ」
結鈴と龍輝の頭を力強く撫でると、信玄が立ち上がった。
息が白く曇るほど冷えているというのに、信玄の袷から見える肌は汗ばんで光っていた。
謙信「……礼を言う。そのうち慣れるだろうと、机と椅子を作るという発想をしなかった」
信玄「無理させて食事を楽しめないのはかわいそうだと思ってな。
それにここでは正座ができないからと言って、咎めるやつもいないだろう」
謙信「そうだな、俺の子として城に住んだなら容赦なくしつけられるだろうが、ここでは必要ない。成長に従ってできるようになれば良い。
まわりの者達が座っている姿を見れば、自ずと覚えるだろう。
現にあちらの世で育った佐助や舞は、正座ができている」