第62章 里山に住まう
佐助「今だから言うけど、謙信様は舞さんが包んだ餃子ばかり食べていたんだ。気づいていた?」
「……え?」
謙信「佐助、余計なことを言うな」
驚いて手を止める。
(そういえば最後の方は私が包んだ餃子がないって…)
おかしいなと思った記憶がある。
佐助「舞さんは謙信様が包んだ餃子ばかり食べてニコニコしているし、見ているこっちがもどかしかったよ」
「佐助君……」
謙信様が包んだ餃子なんて後にも先にも食べられないだろうと、謙信様が包んだ餃子ばかり食べていた…。
気付かれていたなんて恥ずかしい。
でも……まさか謙信様も同じだったなんて驚きだ。
謙信「何?俺が包んだものばかり食べていたのか、お前は」
謙信様も驚いたらしく、手をとめてこっちを見ている。
「う…はい。だって、謙信様が包んだ餃子なんて激レアですから」
顔が熱い。
そんな私を見て謙信様が嬉しそうに笑った。
謙信「そうか…。あの頃はお前が作ったものを貴重に思って食べていた。お前も同じだったのだな」
「ふふ、はい」
佐助「………おふたりともストップです。
手がべとべとで動けない状態でラブラブモードに突入するのはやめてください」
「え、あ、そんなつもりはなくて、ごめんね。佐助君」
気が付けばイカの匂い漂う台所で、3人とも手はべたべただ。
こんなところでなんで桃色の空気を出していたんだろう…。