第62章 里山に住まう
「保存食を作っていたら、佐助君が手伝ってくれるというので教えてあげていたところです…よ?」
ヤキモチやくほどじゃないですよ?と視線で訴える。
謙信「……」
二色の瞳が大量のイカと、私達の手元に移る。
謙信「俺もやる」
「えっ!?だ、駄目ですよ。謙信様。
手が汚れてしまいますし、匂いもついてしまいますから」
謙信「佐助が良くて、俺は駄目なのか」
「も、もう!今、説明したじゃないですか。
そういう理由じゃないです。手に匂いが着いたら、刀の柄に匂い移りしてしまいますよ?
いいんですか?」
謙信様の指先はとても綺麗だから、あまり汚して欲しくない。
謙信「構わない。ここに来てからは、刀より斧や鉈ばかり振るっているからな」
そう言って私の隣に腰かけを持ってきて座った。
どうあってもやりたいらしい。
「しかたないですね。じゃあイカのさばき方を……」
謙信「こうか?」
「はい、それで、このように指を入れて…」
三人で捌くと、木箱のイカがどんどん減っていく。
佐助「なんだかこうしていると、長屋でお蕎麦を作ったのを思い出すよ」
「ふふ、そうだね。あと謙信様とは餃子も作ったなぁ…」
懐かしい思い出に頬が緩む。