第62章 里山に住まう
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佐助「舞さん、この大量のイカはどうするの?」
積み重ねた木箱の中に何十杯ものイカを見て、佐助君が不思議そうにしている。
あたり一面、イカの香りが漂っている。
大鍋に湯を準備する間、イカを壺抜きしていく。
「市場のおばあさんが『イカの酢漬け』っていうのを教えてくれて、作ってみるとこ!
今のところ漬物や塩漬けばかりだから、酢漬けっていうのもさっぱりして良いかなと思って。
半分くらいは塩辛にする予定だよ」
佐助「この大量の野菜も使うの?よくこんなに刻んだね」
ニンジンと大根はスティック状に、手に入った青菜類は千切りにしてある。
「うん、その野菜をイカの中に入れて酢につけるんだ。
野菜じゃなくて下足を入れる人も居るらしいけど、野菜を食べて欲しいから今回野菜入りにするつもり」
イカを胴と、下足、ワタに分けて木桶に入れていく。
「今夜は下足を醤油で焼いちゃおうかな~。
それとも煮物にしようか迷っちゃうな」
保存食を作りながら、夕食のメニューを考える。
佐助「俺が長屋で寝込んだ時にも言ったけど舞さんは料理が好きなんだな。手伝うよ」
「ありがとう。料理は好きだけど、この人数でしょ?さすがにちょっと大変なんだ。
イカを捌く時はこうして……」
佐助「うんうん…」
「そう、それでここから手を入れて……」
佐助「こう?」
「あ、いい感じ。そうすると指に何かあたるでしょ?」
佐助君にイカの壺抜きをレクチャーをしていると……
謙信「二人きりで何をしている」
不機嫌そうな顔で謙信様が現れた。
外のお仕事で熱くなったのか、外套を脱いでいる。
私が誰かと一緒にいる機会が多いので、最近謙信様がご機嫌斜めだ。