第62章 里山に住まう
足音が聞こえなくなったのを確認してからため息を吐いた。
(勢いあまって告白してしまった……)
「はぁ~~~……、私ったら、何してんだろ…」
思い起こすと凄く恥ずかしいことを言ったと思う。
でも胸は晴れ晴れしていた。
『謙信様に言われたから』じゃなく、私自身の言葉で、想いを伝えて、心に整理がついたからだ。
「ふふ、良かった。光秀さんがお兄さんか。変な感じ」
秀吉さんはいかにもお兄さんだったけどな、なんて思いながら床を磨いていると……
ドタドタドタ!!
「な、なに?」
荒々しい足音が、玄関から真っ直ぐこっちに向かってくる。
謙信「舞!!!!!」
突然姿を現した謙信様に飛び上がった。
「はっ、はいっ!?!!」
何事かと思うくらい大きな声だった。
謙信「怪我をしたというのは本当かっ!?」
謙信様はつかつかと歩み寄ってくると、迷いもせず私の足袋を脱がせた。
(まさか…)
絆創膏が貼ってあるのを確認し、謙信様の表情が仄暗いものとなった。
謙信「これはなんだ!?あれほど傷ひとつ負うなと言っただろう?
この間脛をぶつけて痣を作ったばかりではないかっ」
「だって、その、気づかなったというか、見ていなかったというか。ご、ごめんなさい!」
大真面目な顔で謙信様が宣告する。
謙信「この傷が綺麗さっぱりなくなるまで掃除を禁ずる。明日は一日褥から出るなよ」
「そ、そんな…」
(光秀さんだ!秘密にしてって言ったのに!
くーやーしーいーーーーーーー!!)
謙信様に謝る一方で、胸の内で地団太を踏んだのを知っているのは…
兄とも、友とも、少し違う、『意地悪大好き』光秀さんだけだろう。