第62章 里山に住まう
光秀「怒っていたかと思えば…急に笑い出すとはおかしな小娘だ」
腕が緩み、髪を撫でられた。
謙信様とは違う手つき、速さ……でも心地良い。
「光秀さん、あの、これからもよろしくお願いします。
えっと…友達として?いや、友達って感じじゃないですよね。
んーーーーーー、お隣さんとして?」
光秀さんが途端に吹き出した。
光秀「お隣さんとはなんだ。第一、俺のお隣さんは信長様と蘭丸だぞ」
「へ、部屋の配置はそうですけど!じゃあなんて言えばいいんですか?」
光秀「秀吉とは違う『たいぷ』の『おにいさん』……なのだろう?それでいい」
「そ、それって…」
わるたんの説明の一文だ。
光秀「意地悪だけど『大好き』なのだろう?
これからは兄として思う存分苛め抜いてやろう」
にやりと意地悪く笑われて、愕然とした。
「意地悪だけど『そっと気遣ってくれる』から大好きなんです!勝手に大事なところを省略しないでください!」
光秀「わかった、わかった。この話はこれで終いだ。
さっさと足袋を履け。謙信が戻ってきた時に裸足では言い訳にもならんぞ」
くつくつと笑われ、面白くない気分のまま足袋を履いた。
足をついてみたけど、このまま掃除を続けても平気そうだ。
「ではこのまま掃除を続けます…ありがとうございました」
雑巾を洗って絞り、また床掃除を始めた。
光秀「舞」
「?はい」
光秀「いや、なんでもない。怪我には気をつけろ」
「あ!そのことですけど、謙信様には秘密にしてくださいね?
こんな小さな傷でも謙信様は凄く悲しむんです」
光秀「ふっ」
うっすらと笑い、光秀さんは去っていった。