第62章 里山に住まう
(??目線)
もう終(しま)いにしなくては
何度もそう考えた
今日までにしようとすれば
お前の笑顔ひとつで『もう一日』と日延べした
諦めきれず、心が灼けるように熱い
謙信が『笑うな』というのは正しい
俺はお前のその笑顔が一番愛しくて、だからこそ想いを手放せない
手を伸ばせば届くところに居るのに
お前は果てしなく遠い
遠いと感じているのに、その手に触れたいと願うとは愚かだろう?
言葉では伝えていない俺の想いを、お前は受け止めて大事に温めてくれている
お前は心優しく、それゆえに時に残酷なことをする
俺の想いなど捨て去れば良かったものを
なかったことにしてしまえば、お前も謙信も苦しむことはないのだぞ?
お前を愛していた
謙信よりも先に想いを打ち明けていたらと思う程に…
安土に居た頃、お前は知らず知らずのうちに俺に囚われていた
わかりやすいお前の心の動きに気付かないわけがない
だが運命はどう転んだのか、お前と謙信を結びつけてしまった
他愛もないやりとりで眩しい笑顔を浮かべ
目を合わせては恥じらうように微笑み
少しの触れ合いで頬を赤らめる
誰が見ても似合いの夫婦だ
すれ違ってしまった俺達だが、出会わなければ良かったとは思わない
安土の広間でお前と語らったあの時のことは、太陽よりもなお一層輝かしい思い出だ
共に道を歩むことはできなくとも
愛し合うことはできなくとも
幸せだと笑う姿を守ってやりたい
太陽のように温かく、眩しいお前を
影ながら見守ってやる
舞、言葉では伝えるつもりはない
これで最後にする
愛している
………舞に出会えて、良かった