第62章 里山に住まう
佐助「目的地の港町はもうすぐです。人が住めそうな里山を見つけたので案内します」
偵察に行っていた佐助君が早朝に帰ってきて、そう伝えてくれた。
「今日中には着きそう?子供達がもう限界で…」
龍輝「寒い…」
結鈴「お家に入りたい」
昨夜泊めてもらった家の部屋には一切の火の気がなく、子供達は私や謙信様に抱っこしてもらって暖を取った。
白い顔で震えている二人を見ると胸が痛い。
佐助くんも不憫に思ったのか、力強く頷いた。
佐助「昼過ぎには着くと思う。一緒に行った蘭丸さんが迎え入れる仕度をしてくれているんだ。
急いで出発しよう」
謙信「結鈴、龍輝。もうひと頑張りだぞ、頑張れよ」
謙信様は心配そうに二人の頭を撫で、私は現代から持ってきたカイロを二人の背中に貼ってあげた。
「冬服じゃないから寒いよね。もう少しの我慢だからね、ふたりとも」
龍輝・結鈴「「うん」」
(まさか寒い時期を移動することになるなんて)
現代でアレコレと準備したつもりだったけど、かさばるという理由で防寒対策はあまりとってこなかった。
海沿いの集落では冬物の着物を売る人もなく、私達はたいした対策もとれないまま寒い中、歩き続けてきた。
敷布団を敷いた荷車に子供達を乗せ、その上から布団を掛けてあげた。
顔だけ出して鼻を赤くしている姿は、とっても可愛らしい。
「ふふ、くっついて座ってるんだよ。そうすればあったかいからね」
結鈴「はーい」
龍輝「ママは寒くないの?」
「ママは大人だから平気だよ」
荷車から離れて出発の用意をしていると、謙信様が歩み寄ってきた。