第61章 姫の想い人(R-15)
熱くなっている身体を持て余し、謙信様の顔を見つめた。
謙信「どうした?」
二色の瞳は意地悪に細められている。
『触ってください』と言わせるつもりなのだろう。
(その手に乗らないんだから!もう、こうなったら…)
悔しくなって熱い身体に鞭打って、勢いよく立ち上がった。
「ど、どうもしません!仲直りできましたし、帰りますっ!」
フンと顔を背けて歩き出す。
(も、もう!いつも揶揄うんだから!謙信様なんて置いていってやる!)
謙信「待て、どこへ行く?」
少し慌てたような声を無視して歩く。
謙信「………小屋は逆方向だぞ」
「え!?」
慌てて振り返ると、謙信様が肩を震わせて笑っている。
謙信「小屋はあっちだ」
白く細い指が、私が進んでいた進路の真逆を指差した。
「っ、ありがとうございます」
恥ずかしいのを押し込め、ツンとした態度で歩き出した。
謙信様が笑いながらついてくる。
(く、くやしい~~~)
着物で歩ける最大限の歩幅でズンズン歩き続ける。
小屋が見えてきたところで謙信様の腕が私を捕えた。