第61章 姫の想い人(R-15)
「あ」
後ろから回された腕に抱きしめられ、肩口に謙信様の顔が埋められた。
「謙信様?」
胸の前で組まれた大きな手にそっと触れた。
謙信「愛している。今は言葉でしか伝えられないのがもどかしい。 お前を俺の色に染め上げたい」
組まれた手が身体のラインをなぞり、やがてお腹のあたりで止まった。
言葉の意味がわかり、せっかく落ち着いていた身体の熱が急上昇する。
「だ、駄目です」
謙信「今は、な…。しかし再びお前が明智と何かあった場合、
たとえ外であろうと舞が嫌がろうと、お前を抱く。
抱いて、辱め、女の口から子種が余り出てこようと注ぎ続けてやろう」
卑猥な予告にぞくっとした悪寒が走った。
「そ、そんなこと…。
大丈夫です。光秀さんとは他の人と同じように接しますから安心してください。
私が大好きなのは謙信様です」
言葉で信じてもらうしかない。
謙信様と目を合わせ訴えた。
謙信「ふっ、俺が知る舞に、戻ったな」
「………?」
謙信「こちらの話だ。お前はやはり真っ直ぐに物事を見ているのが似合いだ」
「はぁ……、そうですか、ね?」
よくわからず首を傾げるた。
謙信「さあ、用は済んだ。龍輝と結鈴のところへ戻ろう。
佐助がまいってしまう前にな」
「ふふ、そうですね。でもきっと大丈夫ですよ。
信玄様やみつひ…あ、えーと、つまり、皆で子供達を見てくれてますよ」
『光秀さん』と口走りそうになって慌てて言い換えた。
謙信様を刺激しないようにしようと思っていたのに、早速やらかしてしまった。
案の定謙信様の表情はむっとしている。
謙信「本当に舞は無防備で心配だ。
男だらけなのだからな、明智に限らず気をつけろ」
(そんなに心配しなくても大丈夫なのに)
謙信「大丈夫などと思っていると足元をすくわれるぞ。
舞は愛らしいのだ、自覚して振舞いを改めろ」
「え?はぁ……」
謙信様の惚れた弱みじゃないだろうか…。
そう考えながら歯切れの悪い返事を返して小屋に戻った。