第59章 それぞれの道
戦国時代から現代へ帰った時は、安土の皆の最期を怖くて調べられずにいた。
時の神が元通りの歴史になるようにしたというのなら、この目で確認したかった。
ぺら……
佐助君はズレはあっても歴史は元通りに進んでいると言っていた。
大阪の陣が歴史通り起こったのなら、その前の関ケ原の戦いだって…。
(やっぱり。三成君は元の歴史通り関ケ原の戦いで亡くなってるんだ)
『私と家康様なら話し合えば必ず解決致します。心から尊敬する家康様と喧嘩することはありません』
約束してくれた三成君の顔が鮮明に浮かび、胸がキュッと痛んだ。
ぺら……
そこには秀吉さんの最期が書かれていて、学校で習った通りのまま何一つ変わっていなかった。
「…………っ」
(秀吉さんは…信長様と私の三人で話した内容を忘れてしまったのかな)
それとも覚えていながら、子供を家臣の方々に託したのだろうか。
(何も変わってない)
あれほど『歴史を変えることが怖い』と怯えていたのに、変わっていない歴史にがっかりするなんて勝手だ。
歴史書を捲る手はいつの間にか止まり、私の目は文字を追うのをやめた。
(回りくどい言い方なんてしなきゃ良かった)
もっと具体的に言えば伝わったかもしれないのに、ハッキリ言わなかったがために秀吉さんは寂しい最期を迎え、三成君はさらし首にされてしまった。
悪阻で寝込んでいた時に足繁く訪ねてきてくれた二人の姿が、心の闇に飲み込まれて消えていく。
佐助君にお礼を言って歴史書を返し、誰も居ない小屋に戻って竈の前にしゃがみ込んだ。
両膝におでこをくっつけると虚ろな心が真っ黒になっていく。
??「………舞?どうした」
ジャリっと足音がして、頭の上に低い声が落ちてきた。
緩慢な動きで声の主を見上げると、さも不思議なものを見るように信長様が立っていた。