第59章 それぞれの道
(姫目線)
「ねえ、佐助君。ちょっといい?」
皆がそれぞれ何かしている隙をぬって佐助君に話しかけた。
佐助君は小屋の外にある大きな石の上に腰かけ、苦無の手入れをしていた。
佐助「いいよ、何かあった?」
手を止めて眼鏡の奥が気づかわしげに私を見た。
周辺に誰も居ないことを確認して、佐助君の隣に腰かけ、ずっと引っかかっていたことを聞いてみた。
「佐助君、本能寺の変が起きてから大体30年後っていう話だったけど、その時期って確か大阪で……」
ゴクリと唾を飲む。
歴史に疎いけど、テストには必ず出てくる有名な大戦があった。
1614年 大阪冬の陣
1615年 大阪夏の陣
秀吉さん亡き後の豊臣家と徳川家がぶつかり、結果徳川家が天下を治めた大戦(おおいくさ)だ。
佐助君の表情がさっと翳った。
佐助「そうだね。大阪での大戦が起きて、徳川家が天下をとるはずだ。
この大戦で幸村は……命を落とす。
『今』が1313年頃だと推察されるから…近々その戦が起こるはずだ」
「やっぱり……そうだよね」
俯いて、ぼんやりと足元の雑草を眺めた。
雪原でお別れした秀吉さんが亡くなっていることさえピンとこない。
その上、幸村が命を落とす戦が起ころうとしているなんて……やるせない。
時の流れは無情だ。
佐助「ここにいるメンバ―を表舞台から排除し、多少ズレはあるけど歴史は元通り進んでいる。
幸村の最期も、辛いけど歴史通りだ」
『ズレがあるけど元通りに進んでいる』その言い方が引っ掛かった。