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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第59章 それぞれの道


三成「信長様と光秀様が亡くなられ、家康様まで城を出ていかれてしまいました。
 最近の秀吉様は何かに憑かれたような冷たい目をされていますし…」


手に持った包みに視線を落とす。

そうつぶやく三成の目も信長のことがあってから、ずっと曇ったままだった。


三成「舞様が城を去ってから2年足らずで城は変わってしまいました。
 あなたが知ったらどんなにか悲しむでしょう」


不可解な出来事が続いて、それらを事細かく調べたいのに急ぎの仕事が立て込んで手が回らない。

優秀な部下を使い、どんな情報も集めてくる光秀が抜けた穴は大きかった。


(政宗様や家康様のような立派な大名でもない私が、秀吉様を支えられるでしょうか)


算術や戦略を練ることなら得意だが、これからはそれだけでは足りない。

勿論秀吉の下には有力な家臣は多数居るが、どこか不安が拭えない。


三成「舞様、家康様と喧嘩はしておりませんが離れ離れになってしまいました。
 大丈夫……ですよね」


誰にも言えない不安を、なりなりと舞に聞かせるように包みをギュッと抱きしめた。


(おや?)


違和感を覚えて包みを触る。
風呂敷越しに触れた感触に、三成の手が止まる。


三成「もしや…!」


繊細な指先がもどかし気に風呂敷の結び目を解く。


はらり


中から現れたモノを見て、菫色の瞳がみるみる輝きを取り戻した。

風呂敷包みに入っていたのはなりなりではなく、美しい翡翠の目、山吹色の着物を着た『じゃっく』だった。



―――皆さんが決めた、たった一人のその方が、あなたと離れていても寂しくないよう、強く居られるよう、渡してあげてください



舞の優しい声が耳に響くようだった。

荒んでいた三成の心を舞の言葉と、家康の心遣いが癒してくれた。


三成「家康様、舞様、ありがとうございます。弱気になってはいけませんね」


誰に聞かせるわけでもなくそう呟くと、三成はじゃっくを机に置き、尋常ならざる速さで資料をまとめていった。

その目はキラキラと輝き、口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。


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