第59章 それぞれの道
家康「辛気臭い顔しないでくれる?こっちの気が滅入る。
それでわざわざここに来たのはお前に返すものがあるからだ」
家康は書庫の外で待たせていた家臣を呼んだ。
その手には見覚えのある紫色の風呂敷包みがあった。
三成はその包みを見て、サッと家康に視線を送る。
三成「……なりなりですか?」
家康「ああ。2年弱預かってやったんだからお前も気が済んだろう?こいつは要らない。だから返しに来た」
家康は家臣の手から風呂敷包みをとると三成に手渡した。
同盟解消、城の部屋と御殿を引き払う。
矢継ぎ早に言われた内容を飲み込めない状態で三成はなりなりを受け取った。
気持ちが重たく沈んでいるせいで、なりなりが『以前よりも重たく』感じた。
家康「じゃあ俺はもう行く。見送りは要らない。
さっさとその資料まとめて秀吉さんに持って言ってあげなよ」
三成が何か言う前に家康はクルリと背を向けて書庫を出て行った。
三成「家康様っ!」
呼び止める声が聞こえたはずなのに家康は廊下を歩いていく。
その背中からは『追ってくるな』という気配がビシビシと感じられた。
三成は書庫の入口で家康を見届けてから、肩を落として机に戻った。