第58章 時の神
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謙信様達と合流して数日が過ぎた。
佐助くんと蘭丸くんは一番近い集落へと偵察もかねて出発していった。
信玄様と光秀さんはここに来る前に立ち寄った集落へ戻り、布団や食料など様々なものを持ってきてくれた。
手持ちの通貨が使えたのかと不思議に思っていると、信玄様が『クマと物々交換してきた』と事も無げに言った。
光秀さんは譲ってもらったという古い手押し車から次々と荷物を運び入れてくる。
光秀「この地ではクマは貴重な毛皮がとれ、肉は食料となる。
この間のやつは大物だったからな、集落の者達は大層喜んでいた」
光秀さんがドンと置いた大鍋の中には湯呑や皿などの食器類の他、箸やへら、お玉などが無造作に入っている。
信玄「クマの解体にも立ち会ってきた。次、仕留めたら保存やらなんやら、やれそうだ。
あんまりクマを殺生したくないんだがな…」
「信玄様は小グマを飼われていたんですものね。なるべくなら殺したくないですよね…」
信玄「ああ。だがこの間のようなこともある。
いざとなったら仕留めるしかないさ」
(逞しいなぁ)
クマの解体と聞いて些かたじろいだけど、それより二人の順応性の高さに感心する。
「クマに追いかけられるのは、あれっきりにしたいですけど、色々持ってきてくださってありがとうございます」
(これでまともな料理が作れる)
謙信様達と合流してからは旅の途中で手に入れた調理道具があったものの、9人分の食事を作るとなると全然足りなかった。
どれもこれも使い込んだ道具ばかりだったけど、嬉しい。