第58章 時の神
――――
――
佐助「なるほど……そういうことだったんですね」
全員が小屋に入ると、途端に手狭になった。
さっきまで4人だったのが9人になったのだから当たり前だけど。
ワームホールで別れた後の説明をまずは佐助君がしてくれ、そのあと私が話して聞かせた。
信長様と光秀さんも身に起きた事をありのままに話してくれた。
結鈴と龍輝だけがキャッキャッと賑やかで、大人は全員が難しい顔をしている。
(まさか光秀さんがそんな酷い目に合っていたなんて…)
見たもの、聞いたものの記憶を変えてしまう恐ろしい力。
信長様の身に起きたことといい、無理やりといっていいくらい強引な力で本能寺の変が起きた。
(なんの罪も犯していないのに、光秀さんは傷つけられて危なく死ぬところだったんだ)
元の歴史に戻すためという理由だけで信長様、蘭丸君、光秀さんを殺そうとした。
(なんて恐ろしい力なんだろう)
背筋に悪寒がはしった。
「私と佐助くんが変えてしまった歴史をワームホールが、佐助君風に言えば時の神が、元に戻そうとしているなら、佐助君が助けた謙信様はどうなってしまうの……?」
膝上で拳を握り締める。
不安に襲われ、隣に座る謙信様を見上げる。
謙信「……舞…」
困惑しながらも謙信様は私を安心させようと肩を抱いてくれた。
(謙信様……)
佐助「わからない。もともとの歴史では、謙信様は戦の最中に突然倒れ、息を引きとったことになっていた。
だから同じような状況にならなければ避けられるかもしれない。
ごめん。はっきりと断言できないんだけど…」
苦しげに呟く様子が痛々しいくらいだ。
佐助くんにとっても謙信様は尊敬する上司であって、大切な人。
その身を案じる気持ちは私と同じだ。