第58章 時の神
蘭丸「わあ、結鈴ちゃんは舞様似なんだね!あれ?」
「どうしたの、蘭丸君」
いつの間にか蘭丸君が近くまで来ていた。足音をさせないのは流石だ。
蘭丸「佐助殿と武田信玄の他にもう一人、誰か居るよ」
「そう?」
蘭丸君の視線を追っていくと、信玄様の後ろに時折ちらりと白い着物が見える。
信玄様は背が高いから、その後ろを歩いてくる人物がよく見えない。
信長「ふっ、なるほどな。これは面白い」
信長様はわかったのか口の端を持ち上げた。
「謙信様、どなたが一緒なんですか?」
手っ取り早く答えを知っている謙信様に聞いてみる。
謙信様は眉を寄せて口をムッとさせた。
(あまり好きじゃなさそう?)
直感でそう感じた。
信長様が面白いと言い、謙信様は歓迎している雰囲気ではない誰か。
(誰…?)
蘭丸「あー、俺わかっちゃったかも。舞様、銃声だよ」
「銃声?私も知っている人?」
蘭丸「うん」
そう言われて改めてクマが銃撃された時を思い出す。
銃弾より遅れて銃声が聞こえたということは遠くからの狙撃だった証拠だ。
(信長様と謙信様の反応をみると…織田軍の人?)
「え……まさか」
織田軍で銃の使い手。
思い当たるのは一人しかいない。
トクンと秘めやかに心臓が鳴った。