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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第58章 時の神


蘭丸「舞様、大丈夫?着物が凄い事になってるよ!?」


龍輝と一緒に小屋から出てきた蘭丸君が目を丸くしている。

言われて下を見ると、全力疾走の末、信長様の足元にダイブしたせいで着物が酷い有様になっていた。


「…叩けば埃が出そうだね」


笑えるくらい汚い。

小枝や枯葉などの大きい汚れを手で払い、着物の乱れを簡単に直す。どっちにしろ着替えが必要だ。

見られる程度に着物を整え、蘭丸君から事情を聴いた。


信長様と蘭丸君は屋根の修理中に銃声を聞き、川の方をみると煙が上がっているのが見えたそうだ。

何かあったに違いないと川に向かう途中、真っ青な顔で走ってくる龍輝と会い、私達がクマに遭遇したのだと知ったそうだ。

信長様は蘭丸君に龍輝を任せて私の元へ向かった、ということだった。


「良かった、龍輝は蘭丸君が連れて行ってくれたんだね。
 私が全力で走っても追いつかなかったからおかしいと思ったんだ。ありがとう、蘭丸君」


もし途中で龍輝に追いついてしまったら、二人とも確実にクマに襲われていた。


(偶然が重なって私達は助かったんだ。感謝しなきゃ)


蘭丸「どういたしまして。それにしても龍輝君は本当にあの上杉謙信の子なんだね。
 ああして並んでいると瓜二つだ」


蘭丸君がそっと呟く。

にこやかだった蘭丸君の横顔に警戒の色が浮かんでいるのを見て、胸がチクリと痛む。


「難しいかもしれないけど、その…できれば争って欲しくないな」


謙信様も信長様も蘭丸君も、大切な人達だ。

蘭丸君はハッとしたように謙信様から私に視線を移した。
ぱっちりとした大きな目に労わるような光が浮かんでいる。


蘭丸「舞様、俺が顕如様の忍びだったってこと知っているよね?」


知っていたけどデリケートな話題だと思って触れないようにしてきた。

気まずさで意味もなく蘭丸くんの耳飾りに視線を移した。


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