第58章 時の神
龍輝「ママ!!大丈夫!?」
パタパタと走ってくる音がして近くでピタリと止んだ。
龍輝「え、パパ?なんで??」
ポカンと口を開けて龍輝が立ち止まっている。
汗をかいた小さいおでこに褪せた色の髪が張り付いている。
(怖かっただろうな)
「えっと…ママも詳しく聞いてないんだけど、パパと佐助君が助けてくれたの」
謙信「助けたのは俺達だけではないがな」
「え?」
謙信様が渋い顔で呟くと『結鈴達もすぐに来る』と龍輝に言った。
龍輝「ほんと!?やったー!あんな大きなクマをやっつけちゃうなんて凄いねっ!」
謙信様におろしてもらうと、龍輝は待ってましたと言わんばかりに謙信様の腰に抱き着いてぴょんと跳ねた。
龍輝「パパ!」
嬉しそうな顔で喜んでいる。
謙信「龍輝、元気だったか?母を困らせていなかったか?」
謙信様は龍輝の両脇に手を入れ抱き上げ、確かめるように顔を覗き込んだ。
龍輝「うん!やったー、パパだ」
龍輝は首に手を回して抱き着き、謙信様も破顔してその重みをかみしめている。
龍輝「あれー?なんだかパパ、海の匂いがするよ。変な匂い~」
謙信「………」
「ぷ」
感動の再会なのにやっぱり私と龍輝の反応は同じで、笑ってしまった。