第57章 双子
光秀「結鈴、耳を塞いでいろ。しかし目はしっかり開けておけ。
俺がお前の母を救うか…殺すか、しかと見届けろ」
結鈴は丸い目を俺に向けてパチパチと瞬きをした。
言われた通り両手で耳を塞ぎ、真剣な顔で言った。
結鈴「大丈夫、みつひでさんは絶対ママを助けられるよ」
光秀「ああ、そうなら良いな」
口の端を持ち上げ、前を見据えた。
ヒュウ
風が吹き、刹那的に結鈴を見た。
舞の方を見ている結鈴は視線に気づいていない。
光秀「……」
視線を元に戻す。
耳は風の音に、肌は風の動きに集中させる。
合わせた照準の先で、舞の手が子供の手を離そうとしている。
風が止んだ。
引き金を引くと乾いた銃声が響き渡り、銃口から飛び出た弾がやや狙いをずらして飛んでいく。
標的までの距離が長すぎた。
(急所を外したな)
弾が届く前にそう確信する。
弾は舞を掠めるようにして、クマの眉間ではなく首に命中した。
嗅ぎなれた硝煙の匂いに苦さが混じる。
狙いは外れたが舞は煙玉を使って逃げだした。