第57章 双子
光秀「上杉殿」
気配もなく唐突に声を掛けられ、謙信は走りながら後方を見た。
(俺に気どられずについてくるとは…)
感心したが光秀の様子がおかしいことに気づく。
光秀「残念ながら俺はあそこまで全速力で駆けられない。ここから援護射撃する」
走っている光秀の肩が大きく揺れ異常な発汗がみられた。
傷は塞がったが、全快していなかったのだろう。
光秀「ただしこの距離ではあの巨体に致命傷は与えられない。
手負いの獣がどうなるか、貴殿ならおわかりのはず。
急ぎ駆けつけ、とどめを刺せ」
慇懃無礼な態度を捨て、本来の口調が顕わになった。
謙信「誰にものを言っている?」
謙信は一笑し、だが速度を増して駆けていった。