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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第56章 窮地を救うは誰の手か


『背後から飛んできた何か』は、私の耳元数センチのところを通りクマにあたった。

獣の咆哮をあげ黒い巨体が暴れ出した。

河原には赤い血がちらばり、見ると首のあたりから血を流している。

遅れて『パーン』という銃声がずっと遠くから聞こえてきた。


(銃声!?何が起きたの?)


「走って!龍輝っ!!」


訳もわからないまま煙玉を地面に投げつけた。
今が好機であることは間違いない。

龍輝が林の方へ猛ダッシュで駆けていき、姿を消した。


(よし!龍輝を避難させられた!)


クマの唸り声は続いている。この状況なら私が逃げてもクマは追いかけてこないかもしれない。

予定では龍輝を送り出し、自分はクマをひき付ける囮になるつもりだったけど……。


(逃げよう)


意を決して走り出した。
銃声のことは気になるけど、この場を切り抜けるのが最優先だ。


(死ねない。謙信様のためにも私は絶対に生きなきゃいけないっ!)


生き別れようと『生きる』という約束は死ぬまで有効なんだから。

ガチガチに固まっている身体に鞭をうって走った。
川に背を向け、林の方へ。


(動け…!動いて!私の身体っ)


林の中に足を踏み入れた。
龍輝が先に走っていっただろう道をひた走る。

足を踏み出す度に足元で小枝が折れ、雑草がガサガサと音をたてた。

クマとの距離が開き、姿も見えなくなった。
自分の姿もクマから見えなくなっただろう。

睨めっこ状態から脱することはできた。

でも恐怖は去らない。
煙玉の煙がなくなったら、私達の姿をないことに気付いてクマは探すだろう。

それとも興味をなくして水辺へ向かうだろうか?


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