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崩れる花

第1章 夕暮れ時


パキン、パキンと薔薇の花を手折る。

毎日、毎日、愛する人のために執務室に、彼の部屋に花を飾っていた。

でも、彼からしたら、あってもなくてもどうでもいいものだったらしい。

婚約者はスカンジナビアの第一皇子、名はイリス。

生まれた時、私は彼の婚約者になった。

私は愛人との間の子だった。

父の正妻はなかなか子供ができず、精神的に参っていた。
父はそんな姿を見て、子供などいらないと、二人で幸せに暮らしていきたいと言っていたらしい。
だが、彼女は子供に執着した。

そして、他に愛人を作ってもいいからと懇願したらしい。

しかし、私が生まれたら生まれらで憎くて仕方なかったらしい。

試験管ベイビー、コーディネイターを作ることは禁止されていたが、特別な場合は免除されるらしい。

莫大なお金とコネを使い、私が4歳の頃、双子の妹と弟が生まれた。

どうせ一度しチャンスがないのならと、双子にしたようだ。

そうすると、愛人の子である私は用済みになった。

だが、生まれた時から、すでに私には婚約者がいた。

10歳の頃まで家族と共に過ごしていたが、その後婚約者の元で暮らすようになった。

コズミックイラになっても珍しく、貴族がいる国だった。
父は一番位の高い公爵。

最低限の衣食は揃っていたが愛情はなかった。

初めて王宮へ行った日、豪華な食事と肌触りの良い服が与えられ愛されたのだと錯覚した。

一般庶民からしたら贅沢なのだろうが、立場を考えればそれほど珍しいことではない。

イリス様と会ったのは、王宮のバラ園を散歩してる時だった。
バラ園は広く、歩いているうちにどこにいるかわからなくなったらしい。
そんな時、昼寝している彼に出会ったのだ。
3歳年上の彼は私を見て優しい笑みを浮かべた。

私は、少なくとも嫌われていないのだと思った。
実家では誰も笑いかけてなどくれなかったから。

でも、今ならわかる。
あの時の笑みは、私が誰なのかわからなかったから、反射的に見せたもので、他意はないのだと。

彼が婚約者だと知った時、初めて幸せだと思った。

彼にふさわしい人になろうと努力を始めた。

勉強も、マナーも美しさも、何もかも彼のために精進した。

だか、一度も彼は私を褒めてはくれなかった。
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