第2章 父の思い出
最近、何故か父の夢をよく見る。
小さい頃からずっと父に教わってきたテコンドーを今も続けて、日本の来てからは祖父(劉 奕辰)リュウ イーチェンに中国武術を教えて貰うようになった。
老爷(ラオイエ)←中国語で母方の祖父のことを言う
発音がかっこよくて良くそう呼んでいた。
テコンドーの大会が近くなると良く父の夢を見ていた。
老爷も武闘家なので、父とはとても話があったようで最近何か老爷と父の思い出話をしてくれるようになっていた。
韓国にいた時に良く祖父母は会いに来てくれて長く滞在していたらしい。
その時に近くの事務所の練習生達に私と一緒に武術を教えていたと。
日本に来たばかりの時は思い出すことができなかった。
老爷の話を聞くうちに父との思い出と共に、一緒に過ごした彼らのことを思い出していた。
「美鈴(メイリン)、来週大会じゃなかったのか?」
「老爷、練習つけてくれるの?」
「組み手はジスに頼んだ方がいいだろが手合わせならていどならな(笑)」
「老爷には今でも手加減してもらわないと敵わないじゃない。」
「美鈴(メイリン)は感情が前にどうしても出るからな。もう少し鍛錬が必要だな。」
「はーい。」
老爷と話す時間は美鈴にとって父と過ごしている錯覚をするくらい、二人は似ていた。
だから、この10年は辛いと感じなかった。