第10章 許してね、
ここ最近、リヴァイさんは私の読み書きの勉強に力を入れている。
あの日、いつものように外に出てからだ。
何か焦っている様な、怯えている様な。
勿論、リヴァイさんは顔に出さない人だから、リヴァイさんの行動や会話からの推測で過ぎないけれど、なんだか前より居心地が悪く感じてしまうのだ。
そんな中、日課となっている読み書きの勉強も終わり、お互いテーブルに隣同士に座り後片付けをしていた時だ。
彼は何らいつもと変わりの無い様子で口を開いた。
「ユリ」
「はい?」
「もうそろそろ、お前について聞かなきゃいけねぇ事がある。」
「なん、ですか。」
背筋が一瞬冷たくなる。
「お前の出身地についてだ。」
なんですか。なんてよく言う、と自分でも思った。
聞かれる事なんて誰よりも知ってるはずだ。
むしろ今まで聞かれなかった方が不思議だ。
あの日――リヴァイさんの前でパンを貰って涙した日――、私は彼との言葉の壁により意思疎通出来ない事をいいことに、自分が何処から来たのか、という子どもでも答えれる質問から逃げた。
あの日から私はこんなに良くしてもらってるリヴァイさんを騙したまま生活しているのだ。