第9章 変化が怖いんだ。【リヴァイ】
「リヴァイ、さん。おでかけ、です、ね?」
「……あぁ」
切れ切れで聞き取りにくいが、出かけるのか聞いてきたらしいユリに返事を返す。
視線で何処に行くのか聞きたがってる癖に、コイツは決して言葉にしない。
俺としてもその方が都合がいいので何も言わず住みかを出た。
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血が、顔を濡らす。
持っていた血濡れのナイフは、倒れている男の服で拭いて折り畳んだ。
あぁ、汚ェ。
男の側にしゃがみ込み、男のズボンのポケットから財布を抜き取る。
チッ、コレだけかよ。
リヴァイは立ち上がり、来た道を戻る。
彼のポケットには先程盗った財布。反対側には宝石が嵌められた指輪があった。
暫く歩くと、オンボロの建物が見えてきた。
リヴァイは躊躇することなく、慣れた様に扉を開けた。
ギィ………っとドアが軋む。
中には椅子や受付の様な物があり、此処が何かしらの店である事がわかる。
受付に座っていた髭を生やした大きな男が読んでいた新聞から顔を上げる。
「用件は。」
「リンズビーは居るか」
大男は店の奥に「おい、ビー!!客だ!」と大声を上げ、奥に引っ込んだ。
すると入れ違いで、茶髪で無精髭の若い男が出て来た。
「おーおー、リヴァイじゃねーか。調子はどうだ?」
「テメーとふざけた会話をしに来たんじゃねーよ。おらよ。」
カランッと軽い音を立てて指輪が投げられた。
受付に投げられたソレを男―リンズビーは手に取り眺める。
「ん〜……、確かにコレで間違いねぇな。」
「さっさと出せ。」
「わーってるよ。」
ジャラリ、と重い音を立ててリヴァイの前に袋が置かれる。
「今回の金だ。またよろしく頼むな。」
リヴァイは金を取ると中身を見て、直ぐに挨拶もせず出て行こうとしたが、リンズビーに呼び止められ、うっとうしそうに振り向く。
「お前なんか変わったな。いいモンでも見つけたか?」
「あ“?」
「雰囲気が前より柔らかくなった。前のが地下街〈ココ〉の顔だったぜ?甘くなったんじゃねぇか?」
リヴァイは黙って睨みつける。
「俺はお前を気に入ってンだ。…………落ちるなよ。」
「うるせェ。」
リヴァイはそのままドアを開けた。