第1章 こんにちは、お兄さん。
そこには黒い髪をした外国人のお兄さんがいた。
あの音は彼が座った時の音のようだ。
心なしか息が荒い気もするが、大丈夫だろうか。
お兄さんを観察してると、目が合った。
ブワッと冷や汗が出る。
こ、…こっわ!お兄さんの目付きハンパない!!
サッと物陰に隠れ、胸に手を当てて心臓を落ち着かせる。
あの目は軽く人を殺せる域だった…!
怖いものの、気になるものは気になる。
恐る恐る顔を覗かせると、また合った。
けれどお兄さんの方から視線を剃らしてくれたので、そこは感謝した。
しばらくして気付いたが、お兄さん怪我してないか?
お腹押さえてるし。
あ、あれ?よく見るとめっちゃ出血してないか!?
声をかけた方がいいんじゃないか?
でも怖いし…。
優浬は考えた結果、声をかける事にした。
恐る恐るお兄さんの前まで来ると、しゃがんで顔を覗き込んだ。
《あ、あの…!大丈夫ですか…?お医者さん呼んで来ましょうか…?》
「あ゛ぁ゛?何言ってんだテメェ…。」
勇気を持って話しかけたのに言葉が通じないという残念な結果に…。
しかもお兄さんから変な目で見られるというおまけ付き。
どうすれば通じるんだ。英語は全滅だし。
フッと思い浮かんだ。
あ、絵を描けばいいんだ…。
持っていた鞄から一冊のスケッチブックと一本の鉛筆を出し、簡単に病院の絵と救急車、“?”の絵を描き、お兄さんに見せながら《お兄さん、病院、行く?》と言い、絵とお兄さんを交互に指差す。
だが伝わらないのか、お兄さんは怖い目で睨けてくるだけだ。