第6章 普通なお前の目は、【リヴァイ】
女を観察して思ったが、この女は本当に普通だ。
血を見た時の表情も、ユリと呼ばれた時に見せる笑みも、意味が解らず悩む姿も、涙する姿も、普通だった。
だが、ユリの目は綺麗だ。
何故泣いていたのかわからなかったが、何も汚れを知らない純粋そのものの様な目は濁らなかった。
コイツに此処は似合わなさ過ぎる。
ユリは早く此処から出して、陽の下で生活するべきだ。
その方がより一層あの目は輝きを増すだろう。
そうは思うが、そんな上手い事行くわけがない。
ユリは恐らく金目の物を持ってないだろう。
それに言葉が通じないのは痛い。
誰かに預けるという選択もあるが、リヴァイには地上での知り合いはいない。
残るは身売り…………はさせない。
地下でも地上でも東洋人であるから狙われるに決まっている。
自分の家に帰ってもらうのが一番安心なんだが…。
「ユリ。」
《何ですか?》
リヴァイは側に置いていた優浬のスケッチブックを取ると、以前優浬がリヴァイに描いてみせた家の絵を指差し口を開いた。
「お前の家はどこだ」
沈黙が訪れる。
この沈黙は優浬が意味を理解していない沈黙ではなく、理解してしまったからこその沈黙。
優浬は目を休む間もなく泳がせ、リヴァイはそんな優浬を黙って見ていた。
あぁ、コイツは……。
コイツも帰る場所が無いのか。
リヴァイは世界の残酷さに目を閉じ、優浬が頷く気配を静かに感じていた。
そして目を開けると同時に決意した。
コイツの目は俺が守る。
END.