第5章 あのね、
しばらくして涙も収まり、優浬は顔を上げた。
椅子に座っているリヴァイの上に股がり、更に抱き付くなんて恥ずかし事をしてしまったが、今優浬は泣きはらしたことで落ち着いている。
《ありがとうございました。》
「…………。」
軽く頭を下げると、少し乱暴に頭を撫でられた。
優浬は、やっぱり優しいなぁ、と少し笑った。
優浬は薄々気付いていたのだ、此処は自分の居た場所…、世界ではないと。
言語や建物の違いから、外国か?と思ったが、こちらへどの様にして来たのかを思い出し、その考えは排除された。
ならば何処だと考えた時、以前読んだ、元の世界に帰る為に異世界を旅する物語を思い出した。
そういえば、主人公も突然異世界に飛ばされていた。
自分と主人公を重ねてしまう。
そんなことない。ドッキリか何かだろう。
モニタリ●グかもしれない。
そう思う様にしていたが、パンを食べたことで、あちらの物と比べ、いろいろと思い出してしまった。
サバサバした性格の母に、大人しい父、物静かな兄に、うるさい弟。それに可愛がってくれる祖父母。
気の合う友人、優しい先輩、可愛い後輩。
帰りたい。帰りたい。帰りたい。
思いがいっぱいになって、泣いて、リヴァイさんに迷惑かけて、バカだ、私。
ただでさえ言葉が伝わらなくて迷惑だっていうのに。
私だったら今頃警察に突きだしている。