第2章 2
目を合わせたままに首をふるふると横に降れば。
口を塞ぐ手はそのままに。
はぁーって息を吐き出しながら、皇が体重をかけて覆い被さってきた。
「緋芽ちゃんの意思なんて関係ないよね、あの人たちには」
身体を起こしてマウント取って。
皇があたしを真っ直ぐに見下ろす。
「ねぇ緋芽ちゃん」
「…………」
塞がれた唇が、勝手に湿り気を持つ。
息苦しいのか。
動機なのか。
勝手に呼吸が速くなる。
目が、離せない。
口を塞ぐ逞しい腕。
いつまでも小さな男の子だと思っていた皇の身体は立派に男の人のそれで。
あたしよりもはるかにおっきな身体。
獲物を狙う、獣みたいな熱く鋭い眼差し。
泣き虫で。
頼りなくて。
あたしの後ろばっかくっついて来てた小さな弟の面影はもうない。
ああ。
そっか。
この瞬間。
いつも感じてた独占欲の名前が、わかった気がした。
あたし。
この人が欲しいんだ。
「あいつらが1番嫌がること、しない?」
え。
言葉を発する前に。
塞がれていた口から手のひらが離れたほんとにその、瞬間に。
今度は皇の唇がピッタリとくっついていた。
え。
え?
今。
これ…………。
思考が全然追いつかない中、皇の親指が口を無理やりこじ開ける。
空いた隙間から。
熱い舌が、差し込まれて来た。