第2章 2
《side 緋芽》
「もぉおっ!!皇っ、また計算間違えてるー」
「ご、ごめ…………」
「しょーがないなぁ、お姉ちゃんが教えてあげるから」
昔から何やっても全然駄目で。
勉強だって運動だって出来なくて。
いつも泣きそうになりながらあたしの後ろくっついて来てた双子の弟。
いつからか、あたしがしっかりお姉ちゃんしなきゃって思うようになった。
あたしが皇に勉強を教えてあげるんだ。
いつも一緒にいる特権だって、思ってた。
なのに。
「皇くん、今日もお勉強してるの?」
中学になって。
なぜだか急に皇は身長も伸びて、声も変わって。
モテはじめた。
他の女が皇に話しかけることも増えた。
告白されることも。
馴れ馴れしく触らないで。
だから。
誰にも文句言わせないために勉強も運動もうんと頑張って頑張って、生徒会長になった。
そしたら。
あたしにべったりくっついてくる皇に近付く女はいなくなった。
あの双子には割り込めない。
そんな空気も、通用するのは中学(こども)まで。
高校生になれば、いくら邪魔するなって空気作り出したところで『どーせ兄弟でしょ、双子でしょ』
『彼女ポジションあいてんじゃん』
取り行ってくる女たちはお構いなしに皇に群がってきた。
「…………なんて、返事したの?」
皇のまわりでは抜け駆けなし、なんて暗黙のルールがあるらしく、頻繁に皇に仕掛けてくる女もいなかったけど。
それでもこうやって時々告白されることもあった。
「返事?してないよ?」
「え?」
「だって放課後はいつも緋芽ちゃんと帰るじゃん。大事な時間邪魔されたくはないからね」
「そ…………う、なんだ」
つまり。
放課後呼び出されたものの行かなかった。
って、こと。
あたしのが、大事な、時間。
やば。
顔、にやける。
だけど。
「皇、みんな告白(い)うのすっごく勇気いるんだよ!ちゃんと返事しなきゃ駄目!わかった?」