第1章 出逢い
「本当にここに奴らは襲って来ないの?」
「襲ってこないよ」
「どうして?」
「僕がいるから」
呪霊という名を知らなかった彼女が、帳を知るはずがない。しかし流石に適当にあしらったのがバレたのか、は訝しげに僕に視線を向ける。
「そんな顔しないでよ。可愛い顔が台無し。それに、僕がいるからってのはあながち間違いじゃ無いからね」
そう、あながち間違いではない。僕がいる限り、君には指一本触れさせない。
「確かに、化け物は追ってきてないけど・・・」
は辺りを見渡しながら、小さく呟く。
時計はすでに深夜2時を回っていた。
「でしょ。だから安心して、今日はもう寝な」
硝子に傷は癒して貰っているとはいえ、はどう見ても憔悴していた。
「・・・五条さんは、どこかに行ってしまうの?」
「え?」
彼女の唐突な問いに、思わず素っ頓狂な声が漏れる。
今まで散々呪霊に追われていてまともに眠れてもいなかったのだろう。1人では不安なのも無理は無いか。
僕はの隣へ横になると、布団の上から彼女の腹部をとん、とんと軽く叩いてやる。
「なあに、一緒に寝て欲しいの?も初対面の男相手に大胆だねえ」
「あ・・・、違、・・・、ごめんなさい。1人で寝ます」
「ふは、冗談だよ。大丈夫、手出したりしないから安心して眠りな。話の続きは、また明日ゆっくりしよう」
彼女の眠気を助長させるべく行った仕草に効果が出てきたのか、は重そうに瞼を瞬かせる。
「・・・ん、ありがとう。五条さん・・・」
礼を述べて、すぐに小さな寝息を立て始めたを暫く眺めては、ゆっくりとベッドから降りる。
「ゆっくりおやすみ、。また明日ね」
彼女の頭頂を優しく撫でた後、僕は寝室を後にした。