第9章 ※君に触れた日
ベッドの中で、2人で身を寄せ合う。
五条は、今まで触れられなかった分を補うように、片時もから離れなかった。
「……うぅ、」
不意にが、首筋に走る鋭い痛みに小さく唸った。
「…痛い?」
「…少し、だけ、」
その傷口には未だ宿儺の残穢が残っており、の身体を蝕んでいた。
反転術式で治療しなかった訳ではない。
治療できなかったのだ。
宿儺の呪いは、そこらの呪霊の残す穢れとは比にならない。
無理に取り除こうとすれば、の身体に多大な負担を掛ける。少しずつ薄れるのを待つしか無いと、硝子は言っていた。
「…ねえ、」
「ん?」
しかし、為す術が全く無いという訳ではない。
「君のその傷口には、君を襲った呪いの穢れが強く残ってる。痛みを引き起こしてるのもそいつが原因。僕はその痛みを和らげてあげることが出来るけど…」
「…けど?」
「…これ以上に触れたら、僕何するか分かんないんだよね」
そう。ここ数日間押さえ込んでいた欲は、溢れたへの好意と共に、ずっと溢れ続けている。
も何かを察したのか、少し視線を彷徨わせた。
「…私、五条さんになら、何されても…いいですよ」
「…はあ、それ、僕のこと殺しに来てる台詞だって分かってる?」
恥ずかしそうには瞳を伏せた。
そんな姿ですら、五条にとっては愛おしくて堪らない。
「後悔しない?」
五条の問いに、は小さく笑みを零した。
「……大丈夫、だって好きな人ですから」
久しぶりに見たの純粋な笑顔に、五条は表情を綻ばせた。