第8章 君に触れる
「……」
未だ目を覚まさないの傍らで椅子に腰を据え、静かに様手を眺めていれば、硝子が医務室へ入ってくる。
「はぁ、……報告、修正しないとね」
「…いや、このままでいい。また狙われる前に悠仁に最低限の力を付ける時間が欲しい。硝子、悪いが記録上、悠仁は死んたままにしてくれ」
硝子は僕の指示に、ぴくりと片眉をつり上げた。
「…じゃあ、虎杖がっつり匿う感じ?」
「いや、交流会までには復学させる」
「なぜ?」
「……簡単な理由さ。若人から青春を取り上げるなんて…、許されいないんだよ。何人たりともね」
僕の言葉に、硝子は心底呆れた様子でため息を吐いた。
「の自由を取り上げた男が何言ってる」
「すっごい僕の心傷つけてくるじゃんウケる」
「事実だろう」
僕は視線を硝子から、ベッドで眠るへと移した。相変わらず、綺麗な顔が視界に映る。
「が起きたらちゃんと話をするよ。だから今日は連れて帰る。……それに、あの宿儺に襲われた後だ。何が起きるか分からないからね」
「……はあ。次いい加減なことしたら、今度こそ本当にをお前の元から引き離すからな」
「おー、怖い」
僕は戯ける様に笑う。
「ああでも…、硝子」
「?」
「もしが僕といることを拒んだら、そうしてよ」
「……」
それだけを言い残し、僕はを横抱きにして、医務室を後にした。