第6章 亀裂
「…で、何があったのか報告してくれる?」
の眠るベッドの縁に腰を掛け、五条は伏黒に問いかける。
伏黒は、ぐ、と口を一度噤んだ後、ゆっくりとその時の事を話しだした。
伏黒達を逃がし、少年院に残り1人戦う虎杖の帰還を待つ中。
伏黒の目の前に現れたのは、虎杖ではなく、宿儺だった。
「残念だが、小僧ならば戻らんぞ」
「な…っ」
背後から聞こえた声。咄嗟に振り返り、距離を取った伏黒の眼に映ったのは、宿儺の腕に抱きかかえられたの姿だった。
「さん…!?なんで……」
「嗚呼……、の事は心配するな。生きている」
宿儺はケタケタと嗤う。は真っ白な顔をして、瞳を固く閉ざしていた。
「その人に何をしたんだよ」
「なあに、少し可愛がっただけだ」
そう言って、宿儺はの頬をまるで慈しむ様に撫でる。
その光景に、伏黒は表情を歪めた。
「何を企んでいる」
伏黒の問いに宿儺はにやりと不吉な笑みを湛えると、抱きかかえていたを、木の陰に降ろした。
固唾を呑む伏黒に宿儺は嗤う。
「そう怯えるな。俺は今、愛らしく、美味いものを呑んで機嫌が良い。少し話そう」
────────……、
「…成程、縛り無しで宿儺を呼び出した事で、悠仁が戻るのに手こずった結果がこうなったのか」
伏黒からの報告に、五条は深くため息を吐いた。
「…有難う、恵。もう自室に戻って休んで良いよ。あの宿儺とやり合ったんだ。硝子に診て貰ったとは言え、ちゃんと休まないと───… 「五条先生」」
五条の言葉に被せて、伏黒は彼の名前を呼ぶ。
「さんをこの世界に引き留めたのはアンタでしょう。そのアンタがしっかりこの人を守らないでどうするんですか」
「……」
それだけを言い残し、伏黒はその場を後にした。
部屋に残ったのは静寂と、の微かな呼吸音だけだった。
五条はその場で力なく項垂れ、深く息を吐くと嘲るように一笑する。
「はは、教え子にんな事言われるなんて、僕ダッサ」
五条はの方へ視線を向けると、再びその頬に掌を当てた。
「、早く、起きて。君に伝えなきゃならない事があるんだよ」
それだけを言い残すと五条は医務室を後にした。