第3章 副作用
五条さんがお仕事に向かい、一気に室内は静寂に包まれる。
二日間一緒にいただけで、ここまで寂しい感情になるとは。
「・・・なんて、一時的に一緒に住まわせてもらってるだけだし、早くこの身体をどうにかして出て行かないと、迷惑だろうなあ」
たった二日間なのに、五条さんに魅了されてしまっている自分の感情を押し殺すように深く息を吐く。
この感情は、よくある勘違いだと。
初めて触れる優しさに、安堵感を抱いているだけだと、必死に自分自身に言い聞かせた。
「・・・思い切って五条さんの分まで作っちゃった」
勢いで作ってしまった2人分のオムライスを前に、私は唖然としてしまう。
「そもそも何時に帰ってくるか分からないし、外で食べてくるかもしれないのに・・・。第一、彼女でもないのにご飯作って待つなんて、重すぎない?」
恋愛なんてしたことのない私の頭には、後ろ向きな考えばかり過ぎってしまい頭を抱えた。
・・・。
「・・・なんて、意識しすぎか。五条さんはこういうの慣れてるだろうし、・・・適当にメモ用意して冷蔵庫に入れておけばいいか」
・・・慣れてる、か。
自分の言葉でにじむ寂寥感に、本当に嫌になる。憂鬱な気持ちを紛らわすべく、シャワーを浴びた後ソファに座ってぼーっとテレビを眺めた。
「・・・、?」
なんだか、さっきから悪寒がする。頭もクラクラするし、息が苦しい。
「まさか・・・副作用?」
私は自分のスマホに一度視線を投げかけた。
───… 何かあったらすぐに電話してね。
家を出る直前に、五条さんに渡された電話番号。
電話をしようか、と一瞬迷う。
「でも・・・、仕事中だろうし、迷惑かけれないな」
ただでさえ、家に住まわせて貰ったりしているのにこれ以上は迷惑をかけられない。
壁を伝いながら、ふらつく足取りでなんとか寝室へ向かう。
寝てれば治る、なんて原始的な考えが、熱に浮かされた脳内を支配する。
そのまま倒れ込む様にベッドへ横になれば、なんとか布団を身に纏い、私は意識を手放した。