第2章 君の事
「はあ、女の子をソファで寝かせるわけないだろ」
深くため息を吐けば、眠るの膝裏と、背中に腕を通して横抱きにする。
相変わず、軽いな。
を寝室に運ぶ間、ふと彼女の長い睫毛が揺れて、眠たげな瞳が顔を覗かせる。
「・・・ん」
「あ、ごめん。起こしちゃったね。今ベッドに運んでるから」
「え・・・、なんで。私ソファで・・・」
「ダメに決まってるでしょ」
少し強めの口調での言葉を遮れば、びくり、と小さな肩が跳ねた。
「・・・はあ、ごめん。怒ってるわけじゃない。ただ、あんなところで寝たら風邪引くだろ」
「それは、五条さんだって・・・」
「僕は大丈夫なの」
「でも……」
眠たげに表情を歪めながらも食い下がるに、仕方ないと一つ嘆息を漏らした。
「分かった。じゃあ僕もベッドに一緒に寝るから。それでいい?」
「・・・・・・」
は暫く考え込むも、ゆっくりと領いた。
ベッドへを降ろせば、隣へ横になる。昨晩と同様小さな身体に手を置くと、眠気を誘うようにとん、とんと軽く叩いてやる。
は僕の腕の中でうとうとと微睡む。
・・・今なら、少し聞き出せるだろか。
「ねえ、」
「・・・ん、なに、五条さん」
どうやらこの子は、眠気が強いと敬語が外れてしまうらしい。
「どうして今日、お風呂で泣いてたの」
「・・・バレてたの?」
「僕に隠し事なんて出来ないよ」
「・・・そっかあ」
「言いたくないなら、良いんだけどさ」
ただ黙って、からの返事を待っていれば、再びゆっくりと彼女の口が開く。
「自分でも、分からないの」
「うん」
「こんなに優しくされたの、初めてで」
「.・・・うん」
「でも、本当はもう、誰にも迷惑かけたくないの。五条さんにも、他の皆にも」
「・・・」
「やっと、その為の一歩を踏み出せると、思ってた、のに・・・」
「・・・?」
彼女の顔をのぞき込めば、泣きそうな表情のまま寝息を立てているの姿が視界に映る。
「馬鹿だなあ、本当に」
白い頬に手を滑らせながら、僕は届いているか分からない言葉を綴る。
「君を救うことは僕の意思で選んだことなんだ。だから迷惑なんて思うはず無い」
「君は僕に救われていいんだよ」