第2章 狼を拾う
そんな、海賊王みたいにいわれても。
無理。そう咄嗟に喉元まで出かけたのを堪えた。
彼が私に好感を持ってるらしいのは分かる。
だからっていきなり伴侶はすっ飛ばし過ぎ。
琥牙の保護者代わりとみた伯斗さんに話をするため、とりあえず私は琥牙をバスルームに追い立てた。
『伯斗さん、待ってください。 私いきなり伴侶とか言われても困ります!』
小声でそう訴える。
まだ未成年でどうやら複雑な事情があるらしい琥牙の耳に入れるのがなんだか忍びなかったからだ。
すると意外にも彼は聞き分けよく頷いた後に、落ち着いた声で話し始めた。
「勿論心得ております。 まだお二人が出会ったばかりということも。 しかし半人前の彼を今里に戻すには余りにも酷なのです。 その様な抑圧が琥牙様の覚醒を妨げているのかもしれません。 私の望みは琥牙様が一刻も早く成長すること。 真弥どの。 どうかしばらくの間彼をここで伸び伸びと過ごさせてあげてはくれませんか?」
伯斗さんは伯斗さんで別の目論見があったらしい。
そう下出に来られるとこちらは言葉に詰まる。
「それにしても、いくら彼がまだ子供だからって、私も一応年頃の女性なんですよ?」
「真弥どのにはどなたか決まった殿方がいらっしゃる?」
「今は居ません、けど……」
モテるとまでは言わない。
けれど私は欲しいと思った時恋人にはあまり困った事はなかった。
元々執着心は薄い方だから長続きした事も無いけど。
それでもこの歳なら辛い恋の一つや二つも経験済だ。
「この僅かな間にも我が身に起こった状況に冷静に対処出来る順応性、それに最初私の姿を見ても悲鳴ひとつ上げなかった胆力。 人でありながら真弥どのには女人とも思えぬ図太……いえ、おおらかな人柄を感じます」
褒められてるのよね、これ。
そう受け取っておく。