第10章 イケメン vs. 子狼
「伴侶に対しては勿論そうなんだけど、そもそもおれたちは仲間意識とか肉親の情がすごく強いんだよ」
休日の朝。
琥牙がお茶碗を置いて複雑そうな表情で私にそう話してくる。
「うん? そうなの。 あ、だめだよこぼしちゃ」
「いきなり生活環境もかえてもらってよくよく考えたらそれだけでも申し訳ないけど」
「んー。 でもそんな事は今更だし。お野菜もちゃんと食べてね。 おかわりは?」
「だからってこんな大食らいまで……おい、雪牙。 ちょっとは遠慮しろよおまえ」
ここの所、最近の休日の朝の風景。
私と琥牙、雪牙くんの三人は窓辺から差している朝の柔らかな木漏れ日の中和やかに食卓を囲んでいる。
「んな事言われても、俺兄ちゃんに会いてえし。 真弥の飯が美味いから、つい」
「琥牙。 怒んないでいいよ。 ご飯はみんなで食べると美味しいもの、ね?」
そう言って笑いかけると雪牙くんもホッとしたようにこちらを見返してくる。
こんな風景は以前の狭い1LDKじゃ有り得なかっただろうし、共働きだった実家と違い広いダイニングテーブルを囲んでの賑やかな食事には憧れもあった。
「もう。 そんな風に甘やかすから……大体真弥って普段ほっとけない位抜けてるのに、その面倒見の良さって最初から不思議なんだよね」
ため息をつきながらそんな愚痴をこぼす琥牙。
ぽんぽんっと大盛りに盛ったご飯をしゃもじで整えながら、うーんと私も首を傾げる。
とはいっても。
彼が今ちょっと不機嫌なのは休みの朝に二人でイチャついてたのを邪魔されたからじゃないだろうか?