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オオカミ少年とおねえさん

第2章 狼を拾う



そして夜も更けた頃。

突然部屋のベランダの外から恭しく現れた巨大な犬。
それを見た琥牙が目を丸くして『伯斗(はくと)』、と呟いた。


「琥牙様。 匂いを辿って探しましたぞ。 里を抜けてよもやこんな所に」


噛み付かんばかりに興奮してる喋る犬。
その大きな口と牙は人の首なんて簡単に噛みちぎれそうに太く鋭い。


「おれ、帰りたくない。 やっと見付けたし」


琥牙はてこでもここから動かない、と私の後ろに隠れようとしている。


「…えっ……え?」


待ってよ。
こんな化け物前に隠れたいのはむしろこっちの方だって。


「見付けた、と。 ではこの方が? 」


その犬が私と琥牙を交互に見る。

犬が喋るとか話の内容は100万歩譲って。
どうやら琥牙とこの犬は親しい間柄とみた。


「……しかし琥牙様のお相手にはいささかお歳を召しすぎているのでは」

「悪かったわね。 歳食ってて」

「真弥っていうんだよ」

「ああ、失礼致しました。 いえ、でも。 ふむ。 真弥どのと仰いましたか。 どことなく、琥牙様の亡き姉上様に似ていらっしゃる」


細められた金色の瞳で見詰められるとさすがに居竦んでしまう。


「大丈夫だよ、真弥。 こいつはおれの昔からの世話係の狼、伯斗って名前」


後ずさる私に気付き、伯斗さんは丁寧にこちらに向かって頭を下げた。


「初めまして真弥どの。 私は……そうですね。 人間の伝承に倣った言い方をすれば私たちはいわゆる───────『人狼』の一族です」


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