第2章 狼を拾う
そしてお礼のつもりで駅近のファミリーレストランで食事をご馳走し、話しているうちに私は妙に彼に懐かれてしまった。
餌付けてしまったのだろうか。
「へ、琥牙くん? あなた家がないの?」
苗字を名乗らず琥牙とだけ自己紹介した彼はフリードリンクのコーラを口にしながらこくん、と小さく頷いた。
大方親と喧嘩でもして帰りたくないんだろうと私は想像した。
この位の歳の子によくある反抗期ってやつ。
秀でた額や形の良い唇。
よく見ると発展途上ではある。
だが彼は育ちの良い顔つきをしていた。
放置子にも、彼の受け応えからも小狡い嘘をついたり悪さをするようには見えない。
「お姉さんといると気持ちいい。 真弥って呼んでいい?」
彼の言葉のチョイスを可笑しく感じた。
話しやすい、気が合う、安心する。
数ある語彙の中で彼が選んだ『気持ちいい』。
そのセンスを可愛いと思ったのだ。
それで私の方も彼をくん付けで呼ぶのを止めた。
ちなみに私にショタ云々の趣味はなく、恋愛相手としては大人の色気がある歳上が好きだ。
するとこれはいわゆる母性本能というやつだろうか。
琥牙が三人前程の量の食事を口に運んでる間に飲んでいたビールの勢いもあり、私は結局彼を自宅のマンションに連れて帰る事にした。
野宿させる訳にもいかなかったし一晩位なら犯罪にはならないだろう。
子供と間違いなんて起こりっこない。
そんな軽い考えだった。