第40章 コタツから聞こえる愛しい日常
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「琥牙様。 お帰りなさいませ」
「パパ!! おかえり!!」
「ただいま。 愛加、伯斗。 供二はまた遊んでるの? …………仕方がないね。 獣化したては体を動かしたくて堪んなくなるから。 もしかして、供二はそのうち、発情相手は雌狼になるのかもね?」
「そうですなあ。 そもそも供牙様や先代のお父上、琥牙様が珍しい例ですから」
「だね。 でもおれは、今狸寝入りしてる愛しい奥さん以外には興味ないな」
「狸………」
「伯斗言っとくけど、あたしには分かってたわよ?」
頬に軽く押し当てられた口付けで、私はようやく薄く目を見開いた。
「………バレてた?」
こたつ布団の隙間から覗かせた私の視界に、柔らかく微笑む琥牙が見えた。
その瞬間、子犬サイズの供二が私の胸に飛び付いてきて、抱っこをする私の目尻が思わず緩む。
まだ小さいからか、獣化した息子は話すことが出来なくて、それはまるで白い小さなぬいぐるみみたいだ。
「こら、供二はやんちゃだねー。 琥牙もこれ位単純だと可愛いのに?」
そんなちょっとしたイヤミをこぼすと、供牙様みたいにおっきな彼の手のひらが、私の頬を包んだ。
「おれにバレないと思うの? ─────ただいま。 真弥」
【完】