第38章 おねだりは露天風呂で*
「……無理かな」
「だ、だよね?」
「真弥が中でさりげにうねうね動くんだもん。 いいけど、またおれの使って一人でしてるの?」
いつもよりも少し大きいぐらいだった中の彼がまた硬くなってくる。
そうされると、私の方もまたどうしようもなくって、でも、漏れ出そうになる吐息さえも隠そうときゅっと指を噛む。
「ほら、ちょっと抜こうとしたら媚びるみたいに吸い付いて……真弥はこっちの方がお強請り上手だよね」
「ふあっ…」
「ああ、この体位だと真弥の気持ちいトコに当たっちゃうのかな。 でも楽でしょ? もっと力抜いて休んでなよ」
噛んでいた指を外し、やんわりと手を取って頭の上で包まれる。 すりすりと撫でる指先から余分な力が抜けていく。
擦るよりも弱く、少しずつ少しずつ、塗り込むように動いている。
「…っ………は……ぁ」
ちょっと物足りない、でも気持ちいい。
体を寄せ合ってたまにお互いの足先を触れさせて。
頭から足の先までくっついてる。
まるで磁石みたいだと思う。
寒い時に温め合う動物みたいに、フワフワと音のない気持ちいい気配を感じる。
「真弥……最近避妊止めてるよね」
ぼんやりしてる意識の中で静かにゆっくり話してくる。
「でもいいよ。 知っててしてるし」
「……いい、の?」
その返事の代わりにお互いの触れる面積が多くなる。
強さも速さも変わらない。
なんの焦りもてらいもない。
「そもそも最初から、おれたちはその気がないんならしないんだよ、本当はね。 分かってると思うけどむしろ普通の人間よりも。 おれのせいで色々気を使わせてごめんね」
「琥……」
ただ体の反応として奥底からじわじわと立ち上ってくるなにか。
「欲しそうにまた降りてきてるね……かわいい」
赦されて赦して、欲しがられて欲しがって。
そしたら私はこんなでもそうなるんだ。
「ただ今はこうしてたい、かな。 全部が気持ちいいから。 もし辛くてイきたくなったら言って」
「……うん。 私もそうだよ」
微睡みに抱かれるような緩やかな行為。
ただこんなものを与えてくれるのは私には琥牙しかいない。
それを彼も分かっているのだと思う。
彼もそうなのだと思う。
私たちは色んな方法で触れて確かめ合う。
そしてこれもただひとつの愛の形。