第38章 おねだりは露天風呂で*
「……卓さんのこと、途中で止めてくれてありがと」
「ん……元はと言えば、全部真弥のせいだけどね」
「む、何よそれ?」
そんなの責任転嫁、そう言いかけた私の首筋に琥牙が顔を埋めた。
「ありがとう」
噛み締めるみたいにそう口にして、愛おしそうに私を包んで抱きしめる。
触れていい?
その後にそんなことを言うけど、返事を待つ合い間も与えてくれないんなら、聞かなきゃいいのに────────……
「…………っん」
皮膚の端っこを食まれたら、自然とスイッチを入れたみたいに甘い声が出た。
「耳……弱いよね」
多分、琥牙の声のせいだ。
どちらかというと乾いた印象のそれが音量を落として掠れて、直接脳に囁いてくるような。
「ちっちゃい耳たぶ。 お金持ちになれないよ?」
ぱくりと食べられて、伸ばされた舌が入り組んだ耳の器官を探っている。
声とは逆に、それは湿りを帯びてぴちゃぴちゃ響く。
「あ…ん……っ…ぁ」
そんなことされると、立ち登る湯気から時おり滴る水の音も、楽しげな宴の声も、消えてなくなる。
ツツツ、細く丸められた舌の先が溝のあいだを移動していた。
彼の出す音をずっと聴いていたい。 だけど粟立つ肌がムズムズして。
「かわいい。 真弥の体が、花が咲くみたいに開いてくの、好きだよ。 マンションの時は全力で拒否してたもんね」
両手ですくわれた胸を、持ち上げるような触り方はどちらかとうとマッサージに近い。
「っ………て、あれ、は。 琥牙…が」
「後ろからだと、余計に揉みごたえあるね。 胸」
それを両脇から寄せて、そんなことをしてる内に中央に手が滑ってくる。
先に私の途切れた言葉の、その続きを琥牙が受け止める。
「あれは、なんだろ。 いつも妬いてるのと似てるような、違うような……ぶっちゃけると、真弥を取られたみたいな?」
そんな気持ちもあったのかもしれない。 と、今は耳の裏を可愛がってる彼の口が拙い感情を吐露し始める。
両胸の中央に差し掛かった指先が、うすく色の変わった乳輪に触れていた。