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オオカミ少年とおねえさん

第34章 里の特産月の石



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「あー、疲れたな今晩は。 真弥、今日は家に泊まってくんだろ? どうせ明日は土曜だし、もう電車も無いぜ」


コキコキと首を捻って鳴らす浩二の愚痴を聞きながら、私は行きと同じく帰りの車に揺られていた。
ここまで来るとうちの実家はすぐ傍である。


「そうだね。 浩二もいろいろとありがとう」


有難く泊まりの申し出を受けるも、心中は複雑だった。
何も知らなかった浩二を巻き込んでしまったから。

彼の服は破れて役に立たなくなったので、山中さんから借りたシャツの袖がパツンパツンで窮屈そうだった。
せめて今月のボーナスで彼にコートでも買ってあげよう、などと思う。


「朱璃が里やらのボスなのか?」


腕のガーゼをめくってもう血が止まりなんともないのを確認すると、抑えていたテープをピッと剥がしつつ浩二が訊いてきた。


「朱璃様は人間だし、少し違うかな。 前までは人狼の旦那さんがそうだったみたいで、今は琥牙だよ」

「なるほど、ねえ。 ちっと合点いったわ。 真弥がそういう立場にあんなら琥牙、あいつに任せとくのは得策か。 オレじゃ役不足過ぎる」


そんなヤツらとは付き合うな。 そう言われるかとも思っていたから、浩二の言葉は意外だった。


「にしても、だった……て? 今は旦那はいねぇのか」

「朱璃様のこと? うん。 かなり前に亡くなってる」

「フーン………」


二回りも違う年齢差はどうにもならないけど。
そもそも朱璃様は、亡くなった旦那さん一筋のはずだし。

そんなことを考えてると、自分の弟がなお一層不憫に思えてきた。


車が実家の敷地に差し掛かり、間もなく駐車場に辿り着いたようだ。


「あ、浩二。 アメでも」


再びそう言ってごそごそとバッグの中を探ると、浩二が心から煩わしそうな目をこちらに向けた。


「いらねぇって……お前は大阪のオバチャンか」



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