第31章 役立たずな言葉と饒舌な体*
現在進行形でヤキモチモードの彼には逆らっちゃダメ。
そう呪文のように脳内で唱えながら、シーツにくるまりながら着替え終わった私は部屋の隅で冬眠中のハリネズミみたいに小さくなっていた。
これ以上機嫌損ねて襲われたりでもしたら、私の体がもたないもの。
そう思いつつ、先ほどまでのベッドでのことが脳裏に蘇りつい顔を熱くする。
────────ん? ベッド?
って。 そうだ、忘れてた!!
「いやあの、そうじゃなくって! 大事な話が中途半端になってたんですけど!」
呑気に妬いてる場合じゃないわよ。
「琥牙、言ってることおかしいよ。 私を捨てるくせにそんな資格なんてないじゃない」
「は、なに?」
理屈が通じない。 煩そうな目で私を見てくる。
浩二なら慣れてるけど、普段はのほんとしてる人のそんな様子は妙に迫力がある。
顔付きが大人びた今はなおさら。
「ま、真弥」
雪牙くんもそれに気圧されて私を引き留めかける。
それでもワガママは許しません。
私は先ほど訳もわからず自分本位に私を手放そうとした、琥牙に腹を立てていた。
「だってそうなんでしょう。 琥牙は私を諦めるんでしょ? それはそういうことだよ。 私に関して口出す権利が無くなるってことだよ」
「…………」
長々とした沈黙ののちに、顎に二本の指を当て、難しそうに瞳を顰めてた琥牙がはっと我に返った表情をした。
……やっとこちらの世界に戻ってきてくれたらしい。