第31章 役立たずな言葉と饒舌な体*
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サアアア───────……
相変わらず外では雨が降っていた。
情事のあとに醒めてきた自分の体を軽く抱き締め、里のこと、少し聞いたんだけど。 と私はそう切り出した。
「寒いから着てなよ」
自分が着ていたシャツを私に羽織らせてくれ、リビングの非常灯の明かりが寝室を薄く照らしている。
それからベッド横の壁に背中をつけて、並んで座りながら「そっか」と言いながら、琥牙が頭をこちらの肩にもたせかけてきた。
ぽつりぽつりと、彼が話し始める。
「いつもなら裏庭の会話ぐらい、聞こえるんだけどな。 ………おれは真弥にはいつもここにいて、幸せでいて欲しい。 その記憶だけ持っていきたかった」
私は硬い表情で彼の話に耳を澄ませていた。
「ごめんね。 おれはこうなっても、両方は持てない」
静かに話す彼の様子からは、今思い付いた内容という感じではない。
こんなのは想定内だ。
「真弥を片方に抱えて戦える力なんてない」
そんな責任を押し付けるつもりない。
近くで彼を支えるために一緒に行くの。
「平気だよ。 私は自分で立てる。 琥牙と居るのは私の意思だから」
「分かってる。 だからなおさら」
「何それ、私はわかんない。 連れて行ってくれないの? 琥牙の歩く隣に、私はいないの?」
少なくとも、私の心や思いはそんなに弱くない──────それさえも否定するかのような彼の発言に戸惑った。
彼は重責から逃げるような人じゃない。 出来ればそうしたかったのは、分かっていたけど。
だけど、何よりどこへ行っても一緒にいると、そう約束した。
「真弥の大事なものはここにある。家族も仕事も」
そんなつもりなら、私たち二人の未来なんて初めからなかった。
余りにも身勝手だと、そう思った。