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オオカミ少年とおねえさん

第31章 役立たずな言葉と饒舌な体*



***

サアアア───────……


相変わらず外では雨が降っていた。

情事のあとに醒めてきた自分の体を軽く抱き締め、里のこと、少し聞いたんだけど。 と私はそう切り出した。


「寒いから着てなよ」


自分が着ていたシャツを私に羽織らせてくれ、リビングの非常灯の明かりが寝室を薄く照らしている。

それからベッド横の壁に背中をつけて、並んで座りながら「そっか」と言いながら、琥牙が頭をこちらの肩にもたせかけてきた。


ぽつりぽつりと、彼が話し始める。


「いつもなら裏庭の会話ぐらい、聞こえるんだけどな。 ………おれは真弥にはいつもここにいて、幸せでいて欲しい。 その記憶だけ持っていきたかった」


私は硬い表情で彼の話に耳を澄ませていた。


「ごめんね。 おれはこうなっても、両方は持てない」


静かに話す彼の様子からは、今思い付いた内容という感じではない。
こんなのは想定内だ。


「真弥を片方に抱えて戦える力なんてない」


そんな責任を押し付けるつもりない。
近くで彼を支えるために一緒に行くの。


「平気だよ。 私は自分で立てる。 琥牙と居るのは私の意思だから」


「分かってる。 だからなおさら」


「何それ、私はわかんない。 連れて行ってくれないの? 琥牙の歩く隣に、私はいないの?」


少なくとも、私の心や思いはそんなに弱くない──────それさえも否定するかのような彼の発言に戸惑った。

彼は重責から逃げるような人じゃない。 出来ればそうしたかったのは、分かっていたけど。


だけど、何よりどこへ行っても一緒にいると、そう約束した。


「真弥の大事なものはここにある。家族も仕事も」


そんなつもりなら、私たち二人の未来なんて初めからなかった。

余りにも身勝手だと、そう思った。



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