第29章 午後11時。愛欲の奴隷*
すっかり淫らに変わった私の体を彼が抱き締める。
彼の胸が私のお腹にぴったりとくっ付いて、愛する人と触れ合う愛おしさが込み上げる。
反面、上向きになった乳首の先端が舌先で弾かれるけど、今度のそれは優しすぎた。
ムズムズする感覚にもどかしさを感じて、私とベッドの隙間がますます大きくなる。
「………ね。 さっき何でも言うこと聞くって言ったよね?」
「…………?」
なにか無茶なプレイでもさせられるのだろうか。
彼の性格上、それは無いのだろうけれど。
「いい、よ…? でも、それなら私もいい?」
「なに?」
伸びていたので先日梳いてあげた前髪の隙間から見える鳶色の瞳。
莉緒の言った通り、この髪色も単に染めているとも思えない、彼の顔つきは微妙に日本人離れした雰囲気がある。
「琥牙の、も、舐めて…いい?」
「……舐めたいの?」
先回りして私に接してくる琥牙に流されるばかりで、今までしてあげてなかったから。
彼に溶かされる前に私も悦ばせてあげたかった。
「ん」
こくりと頷くと、彼が私の額に口付けをした。
その直前、垣間見えた表情は凄く嬉しそうだった。
「ありがと。 でもおれが先。 目、閉じてて」
「目? ……いいけど」
「お陰で逆に落ち着いた。 さっきからちょっと真弥が緊張してるの。 そっちのが気になるから、今は」