第28章 桜井家の最終兵器
「いい所だね。 ねえ、今晩は妹さんたちそこに泊まってもらったら? うちは狭いし。 だからってこの時間から帰すのも無理だろうし」
「迎えなら……浩二は?」
何でいきなり他人が二ノ宮くんちに? 琥牙が意外なことを言ってくるので、車持ちの浩二に連絡を入れればと思ったら、美緒がそれを受けて返事をした。
「そういえば、なんか夜勤のシフト入れたって言ってた。 今日はそのついでに送ってもらったんだよね」
「それで明日また、みんなで昼でも食べに行けばいいんじゃない」
いつになく主導権を取り話を進める琥牙を不思議に思った。
「今晩、俺んとこですか?」
急に言われた二ノ宮くんの方も少し戸惑ってるようだ。
「いいよね? 保くん」
「わあ、良いんですか!?」
心から嬉しそうにはしゃぐ莉緒は置いといて。
元からの彼の階級……プラス、成長した琥牙はあの日の牙汪の狼並に強くなったんだろうか。
その辺りのことは私には分からないけど、見た目も含め戻ってからの彼には、以前よりも落ち着いた余裕の様なものを感じていた。
「若い女の子に不便な思いさせる訳にもいかないでしょ?」
そんな彼に二ノ宮くんが異論を唱える訳もなく。
「……仰る通りですね」
服従のポーズを取る犬のように承諾した。
でも、このマンション2LDKなんだけど。
二ノ宮くんの所までとはいかなくっても、特に泊まられても構わない位の環境だとは思う。
あ、でも客用の布団はないからやっぱり少しは不便かな?
とはいえさっきから私の肩に置かれてる彼の手に圧を感じて、なんとなくなんとなく、何も言えなかった。